前立腺がんとは

前立腺は男性にのみ存在する臓器で、膀胱の下にあり尿道の周りを取り囲むようになっています。形は栗の実のような形をしています。
前立腺がんは比較的進行が遅いがんであり、早期ではほとんどの場合自覚症状がありませんが、尿が出にくい、排尿の回数が多い(特に夜間)などの症状が出ることもあります。
進行するとこのような排尿に関する症状以外にも、血尿などになったり、骨に転移すると痛みが生じることがあります。
前立腺がんのほとんどは、PSA検査と呼ばれる血液検査で発見されます。PSAは前立腺特異抗原と呼ばれるたんぱく質で、この値が高いと前立腺がんである可能性が出てきます。
しかし、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、この検査だけでは確定させることはできません。追加でMRIや生検をすることで前立腺がんであるかどうかがわかります。

前立腺がんの陽子線治療

Point

正常な組織への放射線の量を減らすことができます
公的医療保険の対象です
通院で治療が可能です

陽子線で前立腺がんを治療する場合、転移の無いことが条件となります。前立腺の局所治療の方法は、手術・X線治療(IMRT)・小線源治療などがありますが、どれも治療効果はほぼ同等であると考えられています。陽子線治療は、正常組織への影響を減らすことができるため、副作用を小さくできると言われています。

治療の方法

陽子線を用いる前立腺がん治療の方法は、前立腺がんのリスクによって異なります。どのリスクになるかどうかは、がんの大きさやPSA検査の結果、生検の結果によって決まります。
直腸を守るために、直腸と前立腺の間にスペースOARを入れることもでき、この場合治療に来ていただく回数を減らすことができます。
1回の治療時間は20~30分になります。

治療回数

低リスクの場合:74 Gy(RBE)/37回もしくは60 Gy(RBE)/20回
中リスクの場合:76 Gy(RBE)/38回もしくは63 Gy(RBE)/21回+ホルモン療法
高リスクの場合:78 Gy(RBE)/39回もしくは66 Gy(RBE)/22回+ホルモン療法

当院の治療の特長

陽子線は左右から挟み撃ちで照射を行います。治療前に毎回インルームCTで6軸で位置照合を行うため、より正確な位置に照射を行うことができます。
前立腺は動きの小さい臓器ですので、陽子線はスキャニング照射でおこないます。スキャニング照射は従来の拡大ビーム法に比べ、より腫瘍の形状に沿った限局した線量分布をつくることができ、治療の副作用を小さくすることが期待されます。

計画
左:拡大ビーム法 右:スキャニング法

スペースOARとは

前立腺と直腸の間にゲル状の物質を挿入し、正常組織である直腸を前立腺から遠ざけることができます。これにより、直腸へのダメージをより減らすことが可能となります。また、治療後永久に残り続けることはなく、半年ほどで体内に吸収されます。スペースOARは保険適応です。

SpaceOAR システム留置前(左)及び留置後(右)のイメージ
日本放射線腫瘍学会 SpaceOAR適正使用指針より引用