肺は胸部の左右に1つずつある、酸素を取り込み二酸化炭素を排出するための器官です。
肺は、空気の通り道である気管・気管支、肺の本体部分である肺野、空気と血液との間でガスの交換を行う肺胞で構成されます。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。 進行するとがん細胞は周りの組織を壊しながら増殖し、血液やリンパ液の流れにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節、がんがない方の肺、骨、脳、肝臓などです。
肺がんに特有の症状はなく、早期の場合自覚症状はほとんどありません。症状がないうちに進行していることもあります。症状の例として咳や痰、痰に血が混じる、発熱、息苦しさ、動悸、胸痛などがあげられますが、いずれも肺がん以外の呼吸器の病気にもみられる症状です。
肺がんの検査は、検診の場合は胸部X線検査(および喀痰細胞診検査)が一般的です。精密検査の場合、X線CT検査や気管支鏡検査がおこなわれます。
肺がんが疑われた場合は、肺がんの種類を調べるための細胞診・生検がおこなわれます。また、どこまでがんが広がっているかを調べるため、造影CT検査やPET、頭部の造影MRIなどがおこなわれます。
肺がんの陽子線治療
Point
通常のX線治療より、正常な肺への放射線の量を減らすことができます。→肺機能が悪くても治療が可能です。
先進医療の対象です。
・先進医療で治療ができる肺がん
(i)手術不能または手術拒否した転移や浸潤のない肺癌
(ii)手術不能または手術拒否した所属リンパ節転移または浸潤のある原発性非小細胞肺癌
(iii)遠隔転移のない気管・気管支癌
陽子線治療は通常のX線治療と比較して、正常な臓器に照射される放射線の量を減らすことができます。そのため、より副作用を少なくすることができる安心な治療といえます。
また、肺機能が悪く手術や通常のX線治療が難しい場合でも、治療が可能となる場合があります。
治療の方法
原則、患者さんの呼吸に合わせた照射をおこないます。照射方法は、動きに強い拡大ビーム法を用いています。
線量や照射回数はがんが肺のどの位置にあるかや転移の有無などで変わります。
転移や浸潤がなく肺の末梢にある場合:64~66 Gy(RBE)/8~10回
肺の中枢にある場合:72.6 Gy(RBE)/22回
転移や浸潤のあるがんの場合:60~66 Gy(RBE)/30~33回
当院の治療の特長
肺がんは当てたいところが呼吸で動いてしまうため、動きが小さいときを除くほとんどの場合で呼吸に合わせた照射をおこなっています。
呼吸に合わせて陽子線をオンオフさせる呼吸同期照射と、照射のタイミングで息を止めていただく息止め照射があります。
当院では10秒程度の息止めが可能であれば息止め照射を、難しければ呼吸同期照射を選択しています。